BILLY BAT 1/浦沢直樹 2009

おまえは 白か黒か どっちなんだ?

個人的には浦沢直樹って「パイナップルARMY」「MASTERキートン」「MONSTER」にはハマったんだけど「YAWARA!」「Happy!」「20世紀少年」にはハマらなかったって言う、解りやすく「ビッグコミック連載にはハマる」「スピリッツ連載にはハマらない」らしい傾向がある。
「MONSTER」以外には原作者が居るって言うのもあるかも知れないけれども。


さて、そんな浦沢が初めて「モーニング」で連載って事で買ってみた。
アメコミを意識した作中作の探偵マンガ「BILLY BAT」は映画「チャイナタウン」風のハードボイルドタッチ。わざと紙質も変えてあってペイパーバックの雰囲気を出してある所なんざ芸が細かい。
しかも周囲を少し陽に焼けた風にしてあって、時代感を出してある。
アメコミ風、と言いながらなんだかんだ浦沢直樹なのでコマ割りは現代の思いっきり浦沢っぽい「マンガ世界内の三次元的移動」技法が多く見受けられるし(例えばキャラクターのズームアップだったり)、そう言ったコマ割りは本当のアメコミでは(近代作品は別として)見受けられない筈だが、そこまで忠実にする必要性は無いか。
あくまで「虚構の過去」な訳だし。
共同製作が長崎尚志だけに「20世紀少年」っぽい虚構の(戦後)裏面史的なお話なのは納得のいく所。
まぁ、まだ一巻だから顔見せというか、有名人が出て来るのもこれからへの前フリなんだか。
月にまで話を広げて、このまま大塚英志みたいな大風呂敷をどれだけ広げられるのかも見物だけれど。
このまま「20世紀少年」っぽい展開だとハマらない可能性があるな。。。


ただ、まだ面白さって意味ではそれほどでもないんじゃないか、と思った。
リーダビリティはそれほど強く無い気がする。
あくまで個人的にだけれども。
好きな人は好きでしょう。
YAWARA!」だって、「20世紀少年」だって好きな人は好きなんだし。
勿論、絵は巧いし、コマ割りも申し分無い。
でも、どうなる?どうなる?とページを捲る手が止まらない。。って感覚は正直無い。
二巻が待ち遠しいなぁ、って事も無い。
本屋に行って出てたら買うけど。
まだざっくり何がどうなってるんだか主人公と同じ程度の情報しか読者に与えられていないし、五里霧中なのは主人公と同じ。
浦沢直樹ってマンガが全て上手いから熱さが無いってのもあるんだろう。
読者がマンガに入り込んで読むんでは無く、良く出来た映画を椅子に座って見ているような。
そんな感じ。
前フリで作品云々言うほどの事も無し。
評価は次巻以降でしょうか。