アイ・ウェイウェイ展 − 何に因って?


作家:アイ・ウェイウェイ

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http://www.honeyee.com/news/art/2009/001384/
森美術館の「アイ・ウェイウェイ展−何に因って?」を観て来た。
ちなみにアイ・ウェイウェイに関しては何も知らないし、中に入るまで興味も無かった。
美術に関してはド素人です。特に近代アートは。
知ったかぶって解説してるのを心の中で嘲笑して下さいませ。
クスリ。


森美術館ってのはかなり広い。
というか空間がでかい。天井が高い。
観客は写真を撮りまくってる。
撮って良いらしい。へぇ。


20090805124656入ったらいきなり1mの立方体がある。解説を見ると紫檀らしい。
その横に同じような1mの高密度の立方体。
なんだか香りがしてる。
解説を見るとプーアル茶らしい。
プーアル茶の立方体。


その横には全く同じ外見の机が一列に並んでる。
ドナルド・ジャッド的でもあり、アンディ・ウォーホル的でもある。
コカコーラの瓶を思い出す。
http://www.eikongraphia.com/wordpress/wp-content/12%20Andy%20Warhol%20-%20Green%20Coca-Cola%20Bottles%201962.jpg
全は一、一は全。
ウォーホルはニヒリズムを込めて大量生産による無個性を描いてみせたけども、アイ・ウェイウェイは少し違うか。


例えばプーアル茶って言うものは、茶の葉1つでもプーアルだし、幾つも集まってもプーアル。1つの事でもあるし、集合の事でもある。
無個性に並んだ机。
山のように盛られた真珠には、ニヒリズムな集合に埋没する個性の無個性。
価値の無価値化。


そしてプーアルと言うものは発酵させる為、長時間をかけるんだけど、その時間を圧縮してあるとも取れる。
もう1つの立方体に半永久的に耐えうる紫檀を選んだのも時間を意識しているんだろうな、と思った。
ちなみに、時間のモチーフは後に他でも出てくる。
一次元的でなく四次元的と言うか。
勿論、お茶は中国も指してる。


「蛇の天井」は面白い作品で、部屋の天井にリュックサックを繋ぎあわせて作られたヘビが這ってる。
なんでも2008年に起きた四川大地震で小学生が被害にあって、その際リュックサックが三つ投げ出されていたんだそう。
これは解りやすい。
このヘビってモティーフは「神様の使い」って意味合いを強く感じる。
だからこそ、このヘビは神のおわす「天」を這ってる。
尾を食うウロボロスの蛇であったらそれは「永遠」を指す。
これも全は一。
集合によって形作られる1つの形。
リュックが子供の魂であれば、このヘビは子供の魂の集合ともとれる。


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「暫定的な風景」は部屋一面に変わりゆく中国の風景写真が張ってある。
何度も言うけど「全は一」
全て中国であり、それぞれが中国。
そして時間。
変わっていく風景の写真は一瞬の風景で、しかし変わっていく風景には時間の経過が示され、この写真がこれからも残っていくとすればこの作品は永遠に近い時間を刻む。
一瞬であり、経過する時間であり、永遠。
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「漢時代の壺を落とす」も同じ。
漢の時代から残り続けた「長い時間」を刻む壷を割る「一瞬」の写真。
そしてその一秒に満たない時間を刻んだ写真はこれからも残り続ける。
因習の破壊や革新性でもある。
「コカコーラの壺」はまさにウォーホル的。
近代中国の西洋化に対するニヒリズムもあるだろう。


中国の近代アーティストらしい中国って国に対する視線やミニマルな描き方は一見難解だけども、ウォーホル的だったりするメッセージは案外ストレートで解りやすく感じた。
なかなか面白い。
プーアル茶のキューブやお茶の家、穴の空いたタンスなど、写真では解らない香りや存在感や、そう言ったものはやはり生で見てなんぼ。
ウォーホルが好きだから親和性があったってのもあるかも知れない。
お暇なら行ってみては?