神のロジック 人間のマジック/西澤保彦 2006


神のロジック 人間(ひと)のマジック (文春文庫)

【続きネタバレがありますので自己責任で】

ある日突然『学校』に集められた主人公たち。
外部からは隔絶された『学校』では毎日謎解きが授業として行われ、不思議な共同生活が続けられる。
しかし主人公らの前に『転校生』がやって来た事により、『学校』で眠る『邪悪なもの』が目を覚まし『学校』を崩壊へと導いて行く。


文庫版で読みました。

表紙は何故か加藤直之。
あの『銀河英雄伝説』のラインハルトの旗艦『ブリュンヒルト』のデザインなんかもやった人。ちゅーかあれすね、作品の内容が内容だけにこれもトリックの一環って事。
つまり『SFのイラストが付いてる=邪悪なものって言うクリーチャーが実際に存在する世界の話』と思わせようとしてるって言う。
深いなぁ....。


西澤っていうと『解体諸因』から始まって、いわゆる『新本格』が講談社ノベルスで全盛期だった頃を代表する作家で、名作『七回死んだ男』とか『人格転移の殺人』といった『本格にSF設定を持ち込んだ』作家でしまいにゃあ巨大怪獣と宇宙人のいる島で殺人が起こる(『笑う怪獣』)までに至り『西澤ってのは何でもアリなんだなぁ』って読者に思わせるに至る。
そんなとんでもない舞台設定を色々と使いながら基本はしっかりと『新本格』の域を逸脱しない、ってのが素晴らしいし、あくまでも『謎解き』にこだわった作品作り。


さて、今作でも謎の『学校』というクローズドサークル設定の中、集められるあだ名で呼び合う主人公ら、目覚める『邪悪なもの』って事で、それこそ『クトゥールー』でも思わせるようなジュブナイルな設定で外角を構成し、でも描かれてるのは閉塞的なコミュニティ内の日常だったりして、意外と密度は薄い。
その特殊な『コミュニティ』の強化として色々と日常とか、人間関係を描写してるなーって言う感じで。


『あだ名』だの主人公が転入したての時に他の『学校』のメンツが怪物に見える、って描写で『主観と客観が違う...叙述なんだな』って見当はついたんだけども、そのせいだか大枠のオチはそれほど強く無い。
イメージとしては『アキラ』すね。おとな子ども。
んだけども最後辺の悲しさいっぱいの情景とか、かなり魅せるんじゃないかなぁ、とか思える。トリックより描写、情感。


小粒だけどなかなかしっかりはしてる。
でも傑作って迄は無いか。西澤の場合、面白いのが他に幾らでもある(『七回死んだ男』『殺意の集う夜』『猟死の果て』辺がお勧め)ので、佳作。

個人的には西澤ってリアルタイムに『解体諸因』から読んでて、初期のSF設定が一番ハマったなぁ、って思い出したらなんだか懐かしい。
..神麻嗣子の辺から離れたな、そういえば。