THE KILLING OF A CHINESE BOOKIE/チャイニーズ・ブッキーを殺した男 1976米

人間は弱い。自分の能力はたかが知れていて、自分の将来も見えてる
本当に幸せな人間と言うのは気楽になれた人間だ

『グロリア』のジョン・カサベテス監督作品。

LAでクラブを経営するコズモ(ベン・ギャザラ)はある時、バクチで借金を作り、その借金を帳消しにする代わりとして一人の男を殺されるように依頼される。手渡された拳銃を片手にコズモは殺しをやり遂げるが、殺した相手は『チャイニーズブッキー』と呼ばれる裏組織の大ボスだった..。


個人的にはカサベテス作品、ってそんなに好きな感じでは無くって(色彩とかテンポとか)ドライでカサついていて、非常に淡々としてるイメージがある。
この作品は、フィルムノワールをイメージしていて、展開はハードボイルド、オチはアメリカンニューシネマ的。照明は押さえ気味で、夜の商売とクラブが話のメインなだけにナイトショットが主体で、影の印象が非常に強い。

物語としては非常にシンプルで、追いつめられた男が殺しを行い、自分の命が逆に狙われて行く過程を淡々と描き、主人公のコズモもその運命を静かに受け入れるキャラクターとして造形されている。
銃撃戦がある割には撃ち合いが無かったり、死体が出て来る訳でもなく、流血も殆ど無い、っていうのも監督の意識している部分だろうし、その辺もドライな印象を強めてる。


ベン・ギャザラの渋い演技がとても味わいがあって、自分の人生を諦観し、ただ静かに物事を受け入れる男を演じていて、このコズモというキャラクターの魅力が全編を支えてる印象がある。

客を喜ばせよう
現実を忘れさせてやるんだ
楽しもうぜマエストロ