青い車/2004日


青い車 プレミアム・エディション

ねぇ、もし神様がいたらさ
きっとあたし達のこと雲の上から観察してるんだ
くそくらえだわ


よしもとよしともの同名コミックの映画化。


幼い頃事故に合い大きな傷を負ったリチオ(ARATA)はレコード店で働きながらDJをやっている。
事故の傷のトラウマのせいかいつも目の傷を隠すように大きなサングラスをかけ、恋人のアケミ(麻生久美子)や周囲の人物たちとも距離を置き、付き合っていた。
ある時リチオはアケミの妹のこのみ(宮崎あおい)と偶然出会い、二人はアケミに内緒で関係を持つようになる。しかし二人の関係は長くは続かなかった。
そしてこのみがアケミにリチオと関係した事を告白した次の日、アケミは自動車事故でこの世を去ってしまう。


原作自体、は非常に短い短編。
よしもとの漫画を初めて読んだのって、確か小学生〜中学生の頃。
短い短編をどう映像化するかと思ったら、アケミが生きていた頃の話が長くて一時間程。
原作短編の部分は三十分無いか。

映画オリジナルの付け足し部分で、リチオがアヒルと一緒に話したり、子供の頃の魂は自分の中には居なくって、地上で生活しているのはその抜け殻だっていうエピソードは、同じよしもとの短編「アヒルの子のブルース」*1からのエピソードを流用してる。


青い車」は、よしもとの話の中でも結構ハードな部類に入る話で(「アヒルの子のブルース」も)最後の釣り人が海に花束を投げようとするリチオに向かって
『ゴミを投げたらあかんやないけ!!』
って言うのに応えて
『ごみんに』
って(つまらない)駄洒落で返す台詞があるんだけれども(漫画版は、そこで終了する)そこがシリアスで押した作品中唯一の「抜き」*2になっていて、作品の抜きを大オチに持って来るって言う構成が他の作家には真似出来ない実によしもとよしともらしい」部分だと思うんだが(「抜き」をオチの持って来る構成はよしもとの「レッツゴー武芸帳」にも類似を感じる)映画版ではそこがざっくりと切り落とされて、最初から最後までただのシリアスな作品になってたのは、ちょっとなんだかなーと言う感じ。
よしもとよしともの一番「よしもとよしともらしさ」が出ている部分を削るのなら、どうして敢えてよしもとの作品を使ったんだろうか。
普通に少女漫画によくあるような恋愛作品でも原作にすれば良かったのに。


作品的には小品だし、演技派の面々が名を連ねてはいるもののやっぱり地味目。
宮崎あおいは可愛くて惚れ直しますが、ベッドシーンは「時代の流れ」をひしひしと感じた。
リチオ「まだ痛い?」
このみ「うん でも感じるよ」
って台詞とか原作にもまんまある台詞だけども少しドキドキ。
ま、結婚もしたしな。


これって原作を知ってる(よしもとの作品を読んでる)のと未読とでは全然違う気がする。
個人的に、よしもとは全部集めてるくらい好きな作家な訳で、そう言う人間が観ると「あぁなるほどなー」って部分も多い。
確かに冗長としてるし、テンポもいまいちだったりするんだけども(言ってしまえばもともとの原作部分の後半だけで成立してるものを水増ししてる訳だから)それも仕方ないんじゃないかなぁと思う。
ただ原作まんまで、もっと高密度な短編映画にした方が余程良かったんじゃないだろうか、と愚考。
よしもとの作品ってなんだかんだいっても「昭和のオシャレな感じ」(オザワケンジが車でかかってたりとか)だったりしたのを、現代でやってもちょっと感じが違ってしまったかもしれない。リメイクの時期が遅かったんじゃねーかって言う。
あとスタッフが写り込んでたりとか..インディーズ映画じゃないんだから。

Life is a show time すぐにわかるのさ / 君と僕とは恋に落ちなくちゃ
それでLife is comin' back 僕らを待つ / Oh,baby Lovely lovely way こんな素敵なデイズ
いつか誰かと完全な恋に落ちる / Oh,baby Lovely lovely way 甘く素敵なデイズ


「止めて、吐き気がする」

*1:よしもとよしとも著「コレクターズ・アイテム」の短編

*2:「緊張と緩和」の緩和