亀は意外と速く泳ぐ/2005 日本


月見そばなら作れます/おとといからやってます
3日で6杯売れました/そのうち5杯はワシのメシ
もうお腹いっぱい

犬山イヌコ「月見そば」


時効警察」「イン・ザ・プール」でもお馴染み何となく良い感じに力の抜けた笑いを作る三木聡のオフビートな脱力系コメディ。
最近だと「インスタント沼」が公開中。
あまり評判は良くないけれど。。


お話自体は実は芯が無くってサブエピソードが大多数で出来上がってるって言うヌルい感じも三木聡な感じ。
なにもやらないスパイ
それがメインストーリー。


主人公スズメ(上野樹里)はスパイになって人生の見方が変わる。
それまで退屈だった筈のごく普通の日常が、見方を変えるだけでスリリングでハラハラする日常に生まれ変わる。
スパイの任務「買い物」、スパイの任務「洗濯」、スパイの任務「亀の餌やり」
別に何が変わったって訳じゃあ無い。
誰かが死んだ訳でも、大事件が起きた訳でもない。命を狙われる訳でもない。
主婦のアルバイトみたいな感じでなった「スパイ」


でもそー言う事って実は誰にでもある事で「恋した途端、世界がバラ色に見える」「競馬で大ケガした」とか、人生変えるほどじゃないんだけど、次の日から人生の見方が変わる出来事ってのはままある話。
笑福亭釣瓶みたいにしょっちゅう面白エピソードに出会ってる人ってのは、それを引き寄せてるってのもあるんだろうけど、日常でそう言うものを見つけるモノの「見方」があるのかも知れない。物事の捉え方。
そーいう積み重ねが「何にも受け止めずただ緩慢に日常を生きて行くか」それとも「一つ一つの事に面白さを見つけて生きるか」って、なんだかんだ人生の大きな差になって行く気がする。


「ドリフトするゴミ収集車」を見て面白いと感じるか、そーじゃないか。
「肉まん食ってたら鼻にシイタケが詰まって、思いっきり吹き飛ばしたら飛び出た」って面白いか。



ちなみにオープニングのパラパラ漫画は、三木聡と同じく「こさめちゃん」「そっと好かれる」などオフビートでシュールなギャグ漫画を描く(黒田硫黄チルドレン)小田扉
団地ともおが好評連載中。
この手の映画を面白く感じるなら小田扉は読むべきでしょう。
黒田硫黄も当然のごとく。


「臭いものには蓋の日」(小出早織主演/三木聡演出)と同じキャラも登場。


普通って何でしょう。
普通に生きるのって難しい。
二番手三番手で、目立たず、特筆する事も無く。


幸せって結局、自分が自分らしく生きる事なんだろうと思う。
だから自分を隠して生きるスパイはやっぱり悲しい。
二番手でも三番手でも、目立たなくても、特筆する事が無くても。
それでも自分が自分らしければ、日常が楽しく過ごせればそれは一番『幸せ』だろう、と思う。

そんな感じの映画。