SHALLOW GRAVE/1995英




ダニー・ボイル作品を初めて観たのってこの映画だったな、と思い出す。
トレインスポッティング」で一部サブカル&洋楽好きから火がつき、
今や「スラムドッグ・ミリオネア」で世間的にも評価の上がったダニー・ボイル最初期の作品。


出演は、まだ無名だったユアン・マクレガー
28日後...」でもボイル作品に登場するクリストファー・エクルストン、よく知らんお姉ちゃんが後一人。


三人が共同生活を送るグラスゴーのマンションに現れる謎の男。
男がある時ドラッグの過剰摂取で突然死、大量の現金を残して往った事から三人の友情が壊れ狂気と欲望に飲まれて行く、
ブラックで毒々しいニヒリズムなストーリーは実にイギリス的な悪趣味横溢で「現金と死体を巡るサスペンス」なんてヒッチコックをイメージさせる滑稽な人間模様。
「現金」と「死体」っていう現実によって、脆くもはかなく壊れて行くあやふやな友情
「正気」と「狂気」の境界は曖昧で、いとも簡単に平和な日常は崩壊する。
何かきっかけさえあれば。
欲望に踊らされる滑稽な悲喜劇。


画面作りの独自性はこの時から発揮されてる。
無数に開いた穴から漏れる光が檻のように差し込む天井裏の光景、だとか。
例えば正面からのクリストファー・エクルストンのアップ>ユアン・マクレガーの顔面アップ>クリストファー・エクルストンの顔面アップ、なんていう特定の決めカットを意図的に前/中/後に配置してあったりだとか、新しい住人をオーディションするシーンでの正面からのカットだとか天井裏からの俯瞰とか、これ以降の作品にしばしば登場するボイルっぽいカット割りも散見出来て興味深い。
しかもカット割りの効果もキチンと内容にシンクロしてて、意図してる事と叙述的な見せ方が合ってるってのも面白い遊び。
つまり最初のアップと後半のアップはリンクしてるんだけども意味合いが全く違うって言う。
そーいう細かいカット割りなんかも注目してみると面白い。
無機質で妙に清潔感を感じさせる画の作り方はブラーの「パークライフ」のPVでも揶揄されるイギリスらしさなんだろうし、この後のダニーボイル作品全般に観られる傾向でもある。


サントラはレフトフィールド、なんて部分も洋楽好き(テクノ/ダンス/ハウス好き)には嬉しいとこ。
こーいう無機質でダンスな感じの曲がちょうど良い。
さすがボイル、良いセンスしてます。


ここからボイルの映画が始まって行くって意味で、確かに作りの甘い部分もあるし、だからこそ勢いがあるって部分もある。
毒々しさも強烈で、エンターテイメント性もこれからって感じかもしれない。
でもだからこそ観るべき部分も多いブラックコメディ。。