BROTHERS OF THE HEAD/2005英



『フリークを見せ物にする事に嫌悪感を感じる』てな視点なら始めっから観ない事をお薦めしたいような。
そんなもん普通の芸能界にしろ『女子供踊らせて金を稼いでる』有象無象が犇めくところなんだから。
今さらそんな正義感とかどうでも宜しい。
あくまで映画は映画として。


虚構の『結合体双生児』のロックバンド栄枯盛衰をドキュメントタッチで描いたフィクション。
フェイクドキュメンタリーと言うか。
で、やってる音楽はかなり正統派でキャッチーなオルタナティブ・ロック。
結合体なんで帯みたいに腹の部分がくっ付いてて、だから一人がボーカルやってて一人がギター弾いて、ってのもアイデア好。
よくロックバンドをテーマに映画をやっても大した事無い楽曲の映画も多いんだけども、この映画の場合かなり丁寧に作り込んでる。
..とはいえ舞台が1975年っていう『マッドチェスター(マンチェスター・ムーブメント)前』の時期にしちゃあ良く出来てるなぁ、ってのはちょいと気になるとこだったりもするんだけども。
(舞台が1990年代前半のブリットポップ隆盛期ってのなら解るんだけど)
個人的にはブリットよりも後のグランジ期の楽曲っぽいなとも思ったり。


双子の性格は、感じとしては元リバティーンズピート・ドハーティみたいに破天荒で繊細で破滅型な天才型のボーカル(カートコバーンとかイアン・カーティスとかイメージソースなんでしょう)とカールみたいに真面目で大人しく慎重なギタリストの双生児、ってリアムとノエルとか。。


この場合の双生児ってのは別に映画のテーマとして『フリークを金儲けの道具に使う芸能界』を批判するなんていう的外れな事では無くって。
どんなに嫌いあっても決して離れる事の出来ない、四六時中一緒にいてプライベートも無く、それでいてだからこそその存在は特殊で、イノセントにならざるを得ない特殊な環境で成長し、しかし隠れる訳では無く逆に周囲の視線にさらされる世界に飛び込み、しかしその繊細な魂ゆえに傷つき堕ちて行った双子のお話。
そー言う感じじゃ無いですかね。


作中作を使っていたり、インタビューやドキュメント(風)映像を使ってフィクションであるにも関わらず、実際に存在したかのような雰囲気を出すのにも成功しているとも思うし(そこを穿って観る必要は無いと思う)、ただ作り込みとして、ドキュメントフィルム部分の比率を上げなければエンターテイメントとしての映画的なドラマツルギーが弱くなってしまうってバランス感覚の難しさも再確認出来た。
でも曲はホントよく出来てる。
あえて「良い」と書かないところに日本語の言い回しの妙を感じる。