FLIGHT OF THE LIVING DEAD/デッドフライト 2007米


ゾンビ・ミーツ・ハイジャック映画。
一部マニアに評判だった「飛行機にゾンビ」な映画。
ジェット機の中に手違いで輸送中のゾンビが復活。
乗客がどんどんゾンビ化して行く、ってな映画。
B級な香りプンプン。


ゾンビ映画の系譜って、
1.『ゾンビ』『ナイトオブザリビングデッド』に代表されるメッセージ性の強い作品。
2.『デモンズ』『バイオハザード』などスプラッターホラーで純粋に観客を怖がらせる作品。
3.『死霊のはらわた』『ブレインデッド』『バタリアン』などのコメディ要素を取り込んだもの。
の三つくらいにざっくり別けられる。
勿論、細かく論じたらもっと多いが。


この作品の場合は2番目の『観客を怖がらせる装置としてのゾンビ』として作品は描かれてる。
低予算だと思うし、序盤のストーリーはとって付けたみたいで非常に浅い。
ゾンビのディテールも『観客がゾンビと言う存在を理解してる』上での説明が添付されてる程度になってる。
まぁ、実際どんな理由でゾンビが発生していようが観客には関係無いのだけれども。
ゾンビが出て来たって事実だけで映画は成立はする。


この映画が上手なのはゾンビの見せ方(魅せ方)だと思う。
「ゾンビ」と言うさんざ使い古されて、やり尽くされたクリーチャーをいかに恐怖の対象として見せるかと言えばその動きやギミックにかかってくるし、突然壁や床を破って現れたり、ファンハウスの仕掛けみたいに如何に『驚かせるか』『気味悪く見せるか』って結構難しい。

例えば『呪怨カヤコ床の上で四肢を蜘蛛のように這い蹲らせてのたうち呻きながら迫ってくる動きっていう動きとか、『座敷女』『リング』貞子なんかのああいう『地べたを張って来る動き』と言うのも人の形をしていながらも人外の動きをする薄気味悪さと言うものが『人の姿でありながら→未知』という逆説的な恐怖を感じさせる装置として機能している。
で、この映画のゾンビの動きと言うのが薄気味悪く仕掛けてあって、カメラの撮り方もあるんだが実に上手い。
エフェクトの掛け方、とか照明の具合とか、そー言う撮り方の妙、と言うか。
ゾンビ好きなら一見の価値はある。


で、そんなゾンビは良いのだけれども、それ以外のディテールに関してはかなり無茶な部分が多いのが難点。
いきなり飛行機内でサブマシンガンを撃ちまくったりとか、銃をガシガシ撃ちまくる、なんて言うのはこれまでのハイジャック映画とかフライトパニックムービーてジャンルでは暗黙の禁止条例だったと思うんだけども、そんな物理法則も定石も無視しまくって主人公らはバンバン撃ちまくる。
しまいにゃ飛行機の扉を開けてゾンビを全部空中に放り出したりだとか..銃弾で機体に穴が空くだの、気圧とかそーいう物理法則は完全無視。
まぁゾンビが出て来てる時点で「物理法則がどうしたっ?!」て気はしないでもない。


ハイジャックものって、
『飛行機って言う密室の中で銃すら無く乗客に襲いかかる脅威と闘わなくちゃいけない』
って部分が見せ場だと思うんだけども。
..だからこそ『スネークフライト』では銃もほとんど最後まで撃たないんだし。
この映画では、ファイヤーカクテルみたいに可燃性のモノを集めて手製爆弾爆発させたり....。
どんだけジョーブな機体やねん、と。
ゾンビが胡散無性するくらいの破壊力の爆発なのに機体には全然傷もついてないし穴も空かない....。
サブマシンガン撃ったら無線が壊れる機体なのにも関わらず...。


出て来るキャラクターもどいつが生き残って、どいつが死ぬかとか、かなりオーソドックス。
飛行機のパニック終息も定番中の定番。
最後のオチもありがち過ぎるくらいありがちで、ちょっと王道過ぎると言うか。
細かいゾンビ部分とかアクション、機体内でのお話の進行とか大虐殺っぷりなんかはかなり上出来の部類。
ただし細かいディテールだとか、シナリオの展開とか処理だとかはかなり雑。
地上のやり取りは正直必要無いし、キャラクターも面白いけども、浅いと言えば浅い。
あと一応コメディ要素も幾つか入ってるんだけども..そんなに面白く無い。

かなりの良質な佳作、だけども作り込みは惜しい。
もーちょっとなんだけどなぁ。
そんな感じ。
全体としては充分及第点。