姑獲鳥の夏/2005日


姑獲鳥の夏 プレミアム・エディション [DVD]

見ろ。我が第四惑星の地球侵略部隊だ。
地球も間もなく、我が掌中に落ちるんだ。

ウルトラセヴン第43話「第四惑星の悪夢」より

京極夏彦の『京極堂』シリーズ第一弾を原作とする劇場版。
勿論、生粋のミステリー好きとしては、リアルタイムで原作がっつり読んでます。


監督はあの実相寺昭夫。
えー、『ウルトラセヴン』でモロボシダンが仲間の前で平然と変身>巨大化後、仲間の居るビルを叩き壊し>惑星地表を焼き払い>敵戦力を殲滅>最終的には、いつのまにか(セブンが叩き壊し)崩壊するビルから抜け出した仲間と宇宙船で合流する(宇宙で突然モロボシダンが乗り込んで来たらおかしいだろ?)というシナリオに難あり過ぎの「第四惑星の悪夢」や、UFOを観たのに化学特捜隊に全然信じてもらえないままお話が進行する「円盤が来た」とか。
ウルトラセブンと言う子供を視聴者層として意識しているフォーマットで(あの時代に)子供向きでない事を平然とやりまくった、乱歩の映像化では名うての実相寺監督ですから。
はてさて。


キャストが原作と全く違うのはもう『そういうもの』として鑑賞。
マークスの山』みたいなもんで、原作と劇場版は違う。

京極役の堤が喋る喋る。
量子力学、認識論、不確定性原理
原作にあるペダンティックな部分をそのまま台詞で喋るもんだから原作を読んでない人間には大層辛そう。
おまけに『一体何が謎でどういう部分が不思議なのか』と言う部分を台詞で処理するもんだから非常に不案内。
=最後のインパクトの弱さに繋がる。


榎木津の『他人の記憶が見える能力』は映像化が難しいのは解るんですが、サブリミナル的なカットの挿入で処理すると辛い。どういう能力かはっきりと解った上で観るから挿入カットの意味性が理解出来るんだけれども、未読でこれが理解出来るんだか不親切に思える。


原田知世はいいですよ。えぇ。
昔、ゆうきまさみ
『世界は原田知世と、それ以外で出来ている』
って名言を残してますが、未だにお綺麗で、怪しげ。
多重人格者としては少々弱い感じはしますが。


やっぱり実相寺演出って舞台的な『鈴木清順』演出を意識(リスペクト)してるもんだから、ピンスポやお得意のレインボーカラーも使いつつ。
舞台のように『歌舞いた』演出が目だつ。
だから、ただ『京極作品』っていうよりも『乱歩風』ってのが頭に付くと非常に解り良い感じ。


まぁあの原作を映像化するなら限度もあるし、駄作って言ってこき下ろすほど悪くは無いと思った。
あの原作で、この映像化ならまぁ頑張った方。
不満は多いけども『デビルマン』ほどじゃない。
下には下がある。


ただ最後近く、あの『憑き物落とし』のオチの部分はかなり不満。
原作だとそれこそ『産まれ出た』って感じのインパクトが強烈なシーンなんですがね。
なんか『あれ?』って肩透かしな...。


恵もかなりのミスキャスト。

この世には不思議な事など何も無いのだよ。

関口君。