TRAINSPOTTING/1996英

Don't be told what you want
Don't be told what you need
There's no future, no future
No future for you

SEX PISTOLS「GOD SAVE THE QUEEN

NO FUTURE。
かつての大不況下、ビザールなボンテージショップ『SEX』に出入りしていた連中を集めてマルコム・マクラーレンが結成させた(眉唾)SEX PISTOLS
『未来は無い』と叫んで『大英帝国万歳』と皮肉たっぷりに歌った。


未来を選べ。
TRAINSPOTTING」劇中ではそう言う。
それはつまりPISTOLS時代の不況は『未来なんて無い』ほど世間全体が荒んでいた訳で、『選べる未来がある』というのは大幅な経済格差と高い失業率。
イギリスのクスリ浸けのYジェネレーション、基本的な行動基準は逃避。
何かあればドラッッグや快楽に逃げる。
面接の前に緊張しても、赤ん坊が死んでもドラッグに逃避し、ドラッグ中毒を解消するためのプレッシャーに勝つ為にドラッグを使用する。
世間が自分を認めないからドラッグを使い、仕事が無いから盗み逃げ回りドラッグを買って嫌な現実から逃げる。
選ぶ未来なんて無いし、見たくも無いから逃げる。
喧嘩中毒で目の前のものを打ちのめすのが趣味のベグビー(Robert Carlyle)は『逃避』を選択しないからこそドラッグをやらない。現実世界で発散される暴力に満たされて、逃避を選択する必要が無い。
トミー(Kevin McKidd)は彼女が居て満たされているからドラッグをやらず、彼女が去ったからその穴を埋めるためドラッグに逃避し、死ぬ。


スラムドッグ$ミリオネア」のダニー・ボイルが監督。
原作アーヴィン・ウォルシュのブンガク的表現を忠実に映像化。
詩的且つシュールな表現も見事に映像化するセンスは凄い。
..もし舞城王太郎作品を映像化する時があるならトレスポ並みに是非『忠実』に映像化して欲しいもんです。


パンク界のゴッドファーザーIGGY POP(劇中で『ジギーポップ』とか間違えるシーンがあるけどあれはZIGGY STARDUST+IGGI POPですね。あの世代にはその程度の認識ってことで)の曲も決まってるし。音楽の使い方も巧い。
きちんと後半に行くに従ってパンク→ロック→テクノって時代が移動してる(後半にはUNDER WORLD使ってた)時代も変わるし音楽も変わる。


場当たり的にドラッグに逃避し、ドラッグと手を切ったと思いきや昔の仲間とは手を切れず、最後には仲間を裏切って金を持って一人逃げる。結局最後まで『逃避』した主人公は一応自分の『未来を選んだ』訳だが、その先には何が待ってるのか。
アタルイミライか、安定した生活か。